C/W Close your eyes

<written by Miou.Shiina>

 

 

ワンルームマンションで ヤツらと共同生活を始めてから 2週間が経つ。

「ねーねー、おなか空かない?」

「そりゃそうだよ。夕飯 食べてないんだから」

「そうだったっけ?こう 毎日ダラダラしてるとボケてきちゃうね〜」

「大丈夫、福沢さんが ボケても僕が面倒みてあげるから・・・」

「黙れ・・・!!じゃ カレーでも作ろうかな」

「あら、こんな所に牛肉が♪たまねぎ たまねぎ あったわねっ♪」

「古い・・・!!」

「今日の福沢さんは 採点厳しいなぁ」

「えーっと、お米 何合くらい炊こうかな〜・・・」

「ひの、ふの、みの・・・7人だから7合でいいんじゃない?」

「ええっ!?僕は 育ち盛りだから 3合は軽く食べるよ」

狭いキッチンに 福沢が立って米を研いでいる。

それを 取り囲むのは 細田風間

「10合でも20合でも 勝手に炊いとけ!!」

やかましい3人に向かって そう怒鳴りちらす。

「日野先輩、この絨毯 ちゃんと掃除機かけましたか?」

荒井が 部屋中を コロコロ(正式名称不明。カーペットの上を転がして髪やほこりなどを取るもの)で掃除している。

「この狭い部屋に7人もいれば 髪の30や40本 抜け落ちて当たり前だろ」

「全然 綺麗になりませんね〜。そうだ!!いっそのこと 大掃除しちゃいましょう!!」

オレの言うことなど 全く 聞いていない荒井が ぽん、 と手を打って目を輝かせる。

この 掃除魔め・・・・。

「今 何時だと思ってんだ。23時だぞ?よい子のテレホタイム開始時間だぞ!?ご近所に迷惑だろうが!!」

「じゃ、まず タンスをベランダに出して・・・新堂さん、ちょっと 向こう側 持ってくださいよ」

「ああん?今 【恋のから騒ぎ】見てんだよ。ちょっと待ってろ」

新堂は ワンカップを飲みながら TVに集中している。

「・・・・・・・・新堂、お前くらいは まともでいると信じてたんだが・・・」

「日野うるさい。音 聞こえない」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「タンスが通りますよ〜 はい、どいた どいた」

「やだっ!どうして タンスなんか動かしてんの!?」

「風水に引っかかったか」

「じゃ カーテンは黄色じゃないと いけませんね。僕 ちょっと買ってきます」

「ちょっとぉ!このタンスどうするのよ!この位置じゃ トイレに入れないでしょ!」

「だいじょうぶ!こういうときこそ この僕が・・・うがぁぁぁぁぁぁぁ!!!

細田が タンスの角に 足の小指を打ちつけて 奇声をあげながら 床に転がる。

こんな生活が もう2週間も・・・・・・。

思わず 泣けてきた・・・・が

「日野君、泣いたら 殺すからね」

いつの間にか 横に岩下が立っていた。

 

 

彼は 毎日 近くのコンビニでスポニチを買ってきては、梅サワーで朝から一杯やっているし

彼は 毎日 新しい掃除器具を購入してきては 掃除と銘打った破壊活動を行うし

彼は 毎日 「異星間の友情と愛情を綴った書」と感動しながら“うる●やつら”全巻を読み漁っているし

彼は 毎日 大量の食物を購入してきては 破竹の勢いでそれを食い荒らしていくし

彼女は 毎日 好みの色合いを求めるため コピックを重ね塗りして 必ずシンナーでトリップするし

彼女は 毎日 花嫁修業と称して 謎の料理を食卓の上に並べるし

彼は 毎日 その後片付けをしている。

 

あっという間に 7人の時間が 流れていく。

俺にとって 苦痛としか思えない過酷な時間が 過ぎていく。

 

彼の名は 新堂 誠。

彼の名は 荒井 昭二。

彼の名は 風間 望。

彼の名は 細田 友晴。

彼女の名は 岩下 明美。

彼女の名は 福沢 玲子。

彼の名は・・・ 俺の名は・・・ 日野 貞夫。

 

 

 

 

 

「新堂、荒井、風間、細田、岩下に福沢」

新聞部の部室で くだらない話をしていた6人に声をかける。

「「「「「「??????」」」」」」

一瞬の躊躇の後、 棚に置かれたサバイバルナイフへ手を伸ばす。

これで こいつらをまとめて・・・殺してやる。

「殺人クラブ、活動開始だ・・・!」

「「「「「「やったぁぁぁぁぁぁー!!!!」」」」」」

「!?」

「じゃ、まず どこに拠点を置こうか?」

「ラストダンジョンと言ったら、異世界でしょう」

「なら スンバラリアに・・・」

「買い物とか めんどくせぇんじゃねぇか?」

「都内!都内にしよ!コンビニの近くね」

「・・・お、おい?聞いてんのか、お前ら。殺されんだぞ?わかってんのか?」

「じゃ、携帯で電話してみますね。・・・・あ、もしもし?都内でいい部屋空いてませんかねぇ?」

「私、家から 荷物を持ってこなくちゃ・・・」

「あたしも ドライヤーが無いと困る!!」

「オレも整髪料・・・」

「ハゲるぞ、新堂」

「え?ワンルーム?構いません構いません。あ、日野 貞夫といいます。ええ、口座番号は・・・」

「電話で口座番号言うんじゃねぇよ!!それより なんで知ってんだ、お前!!」

 

 

 

 

 

ヤツらを部屋に押し込めた翌日、部室に 彼を呼び出した。

「どうしたんですか?」

いつも通り 人の良さそうな笑顔を向ける彼に 俺はこう言った。

「俺・・・人間、やめたい」

 

 

 

 

 

「は?元々 彼らは日野先輩の友達でしょう?」

彼は 言った。

友達なんかじゃないさ。

ただ 腐れ縁なだけの話。

 

 

 

 

 

彼が 俺に問う。

「彼らを どう思っているんですか」

俺は 素直に答えた。

「ロクデナシ」

 

 

 

 

 

その日以来 学校には行っていない。(というより 行かせてもらえない)

 

 

 

ヤツらの両親が騒ぐ気配は まったくない。

ヤツら曰く

「「「「「「日野(先輩)の家に泊まる、って言ってある」」」」」」

そうだ。

嘘だって気づけよ、親・・・。

 

 

 

 

 

終わりの見えない ループに 取り込まれてしまったようだ。

「どうしたら 俺は救われるんだ・・・・・・・・?」

そう ヤツらに問い掛けてみる。

 

「あ、牛肉 賞味期限切れてる。けど、ま いっか」

「黄色いカーテン 買ってきましたよ!!」

「まて、今 【ワンダフル】見てるから。ちなみに この後【トゥナイトU】見るからな」

「新堂先輩・・・おっさん臭い・・・ッッ!!」

「おっさん臭いんじゃなくて こげ臭いけど?」

「えっ!あ、たまねぎ 焦げてる!!」

「福沢さんが作ったものなら 僕はなんだって食べるさ!!」

「そのたまねぎを作ったのは 福沢さんじゃないわよ?」

「じゃ 食べない」

「あー、タンス置くのに そこのACアダプタ邪魔です。抜いて下さい」

「テレビ見てるんだから 邪魔すんじゃねぇよ!!」

「そこにタンス置いたら コンセント無くなっちゃうじゃない」

「自家発電だな」

「チャリ! 僕 チャリンコかっぱらってきます!!」

「また タンスやりっぱなし〜!」

「今、荒井くん 一人でタンス運んでたわ」

「荒井って結構 力あるんだな」

「ルーが足りないなぁ。片栗粉、混ぜてもOKだよね?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

返事は 無い。

 

 

 

「なぁ・・・俺、もう寝るわ・・・」



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