00:36 旧校舎だ。ここまできたらもう後戻りはできない。 ここに日野が解毒剤を持っていったとすると、日野がいる可能性もある。 あいつには妙な小細工は通じないだろう。 だったら、正々堂々と真正面から向かってやる! 僕は懐中電灯を点けた。 さて、どこからいこうか?教室を一つ一つ見て回るのは時間の無駄だ。 そう思った僕は、旧校舎の中で一番入らない場所はどこだろうと考えた。 まず僕は男だ。男にとって入らない場所…更衣室…女子トイレ…女子トイレ! まずはそこにいってみよう。 旧校舎は三階までだから、トイレは三箇所に設置されている。 さて、どこから探そうか? 僕は…直感を頼りに三階の女子トイレへと向かった。 00:30 女子トイレに着いた。 前と後ろのどちらから調べようか?僕は、奥の方から調べることにした。 懐中電灯のせいで、奴らも僕がここに居ることを知っているだろう。 だったら、逃げも隠れもせずこっちから戦ってやる。 そう決意した僕は、一つ一つの個室を照らしてみることにした。 一番奥には無かったが、二番目の個室を照らしてみると…あった! 解毒剤が隅っこにおいてある。手を伸ばそうとしたその瞬間! 「えーい!」 僕の手に鋭い衝撃が走った。 驚いた僕は、しりもちをついてしまいながらも懐中電灯を照らした。 すると、福沢がシャーペンを武器に構えていた。 解毒剤の番人としてだろうか。個室内には福沢が隠れていたのだ。 僕は持っていた武器を出そうとしたが、倒れた拍子にどこかに落としてしまった のか見つからない!どうすればいんだ! そうだ!岩下のときみたいに、あのレポートを盾に脅してみよう。 科学室で見つけたレポート、だけど暗くて読むことができない。 タイトルはたしか… 「人間の生と死に関する100日の動向!!」 福沢の手が止まった。 「どうしてそれを!」 僕は後ろのポケットからレポートを取り出すと、福沢の前に突き出した。 「科学室でみつけたのさ。こんなレポートを受け取る教師も教師だけどな」 「返して!!」 「おおっと」 飛びついてきた福沢を避ける。その拍子に僕はレポートを落としてしまった。 福沢は取り戻そうと身を乗り出した。 バキッ! 「キャー」 「あぶない!!」 窓の木が腐っていたのか、鈍い音を立ててまっさかさまに福沢が落ちていく。 ドサッ!! 遅かった。校庭に大の字になるようにして死んでいる。 その上からレポートが雪のように舞い降りていた。 残りのレポートを完成させることなく死んでしまった…。 こんな物思いにふけっている場合じゃない! 僕は、解毒剤を丁重に摘み上げると一気に飲み干した。 時計を見る。 『 00:15 』 よし!ぎりぎりセーフだった。彼女に感謝しないといけない。 さて、彼女を探そうか。 おそらく宿直室にいるのだろうけど…それとも家に帰って警察に通報しようか? そう僕が考えていたとき、彼女の声が聞こえた。 「逃げて!早く!」 切羽詰った彼女の声!窓からのぞいてみると…校舎が燃えている! 彼女が中にいるかもしれないのに…こんなことするのはもう一人しかいない…。 僕は急いで校庭の方へ走っていった。 校庭には彼女が立っていた。そして彼女の視線の先には… 案の定、燃えさかる校舎をバックに日野が不気味に笑っていた。 そして奴は、僕の方に向き直ってこう言う。 「役に立たないヤツはみんな俺が始末したよ。風間も新堂もな」 「日野!ひとつ聞きたい」 「なんだ?」 「殺人クラブってなんだ?何のためにある」 「よく聞いてくれた!まず俺達はストレスがたまるだろ?だがエリートはスト レスをためてはいけないんだ。そこでどうするか……ストレスになりそうな 存在を排除するんだ!」 奴は自信たっぷりにそう答えた。 その語調には、罪悪感の欠片も見られなかった。 …こんな奴がこの世界にいると思うとゾッとする。 「日野!おまえは…頭がおかしいよ」 やっと出た言葉がそれだった。 「誉め言葉として受け取っておくよ。いつの時代も、天才の考えることは凡人 には理解されないものさ!どうだ坂上?お前、殺人クラブに入る気ないか? お前なら俺の後を継いで、いい部長になれそうだ」 「少なくとも僕はお断りだね」 「そうか。ならば仕方ない。殺人クラブは俺の代でおしまいだな。お前には七 不思議の企画と偽り、六人の落ちこぼれと一人の先生を殺した犯人として、 死んでもらおう!」 日野がそう言ってナイフを取り出した時に、彼女から不思議な声が聞こえた。 「おまえだったのか、俺の眠りを妨げた元凶は…よくも…よくも!」 地の底から湧きあがるような低い声、本当に彼女なのか。 考える余裕すらなく、僕の意識が何かに乗っ取られる。 体が熱い。一体どうしたんだ! 「…え?あ…ギャアー!!」 …気がつくと日野は倒れていた。奴の心臓にナイフがささっている。 奴のシャツは血だらけで、既に死んでいることは一目瞭然だった。 …いつの間に……僕が殺してしまったのだろうか? ウ〜〜〜〜ウ〜〜〜〜〜ウ〜〜〜〜ウ〜〜〜〜 遠くから消防車のサイレンが聞こえてくる。 そしてその音は、だんだんと大きくなっていった。 近所の住人が通報したのだろうか?どうしよう! 僕が犯人にされてしまうかもしれない!動揺している僕に彼女が囁いた。 「旧校舎の大鏡へ…あそこなら安全よ…それに…あなたにすべてを話してあげ るわ…」 僕は彼女に言われたとおり、旧校舎の大鏡へ行くことにした。 次のページへ・・・ |